介護記録の書き方完全ガイド|例文&ポイント徹底解説
【結論】
介護記録は「利用者の安全・権利を守り、ケアの質を高めるための“命綱”」です。正確で客観的な記録は、介護職員や看護師、他職種間の情報共有をスムーズにし、事故防止やケアプランの質向上、家族への信頼構築にも大きく寄与します。書き方のコツを押さえれば、誰でも効率的で質の高い記録が可能です。本記事では、具体的な例文、場面別テンプレート、業務効率化のヒントまで徹底解説します。

介護記録の基本と目的|なぜ正しく書くことが重要なのか
介護記録とは何か|役割・法的根拠と利用者・家族・スタッフへの影響
介護記録とは、介護サービスの提供内容、利用者の様子、職員の対応や判断を「事実」に基づいて記載する公式な記録です。これは、介護保険法や介護報酬請求においても重要な法的根拠を持つ「証拠資料」であり、施設や事業所にとっても不可欠です。
例えば、家族からの問い合わせや苦情があった際、過去の記録をもとに状況を説明することができます。現場でよく聞く「記録は自分と利用者を守る」という言葉は、まさにその重要性を物語っています。
介護記録がもたらす効果と情報共有の重要性
介護現場では、スタッフ間の情報共有がケアの質を左右します。利用者本人の体調の変化や、転倒、皮膚トラブル、排泄状況など小さな変化も記録に残すことで、次の対応がスムーズになります。
- 「昨日の夜間、○○様はトイレ介助で立ち上がる際に痛みを訴えた」
- 「入浴後、皮膚の赤みを確認」
こうした具体的な記載が、ケアプランやサービス提供の改善につながります。
ケアプラン・サービス提供・事実の証拠としての活用方法
介護記録は、ケアプラン作成のための貴重な情報源です。利用者の行動、体調、精神状態の変化を正確に残すことで、職員間で客観的な情報を共有できます。
特に看護師や福祉職員、他職種との連携を深めるためには、記録の書き方や表現の統一が不可欠です。例えば、以下のように具体的に記載すると誤解が生じにくくなります。
「13時、食事介助時にむせ込みあり。咳込み続くも水分摂取可能。嚥下状態要観察。」

介護記録の書き方の基本|押さえておきたい原則とコツ
5W1Hを使ったわかりやすい記録のコツ
記録は5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識すると、具体的で伝わりやすい文章になります。
例えば:
「7月7日13時、居室にて○○様、食事介助中、むせ込みあり。原因は早食いと思われ、少量ずつ介助実施。」
事実と客観的な表現|使ってはいけない言葉・主観との違い
「落ち着かない」「不機嫌そう」といった主観的表現は避けましょう。事実を書くには、観察した「行動」や「様子」を記載します。
NG例:
「不機嫌そうだった」
OK例:
「表情険しく、スタッフの声かけに応じず黙っている様子」
観察力・アンテナ力を高める記録習慣
日々の記録は、利用者の小さな変化を見逃さないための「観察訓練」でもあります。体調、皮膚状態、転倒のリスク、排泄、食事の摂取状況など、具体的にメモを残しておくと、いざ記録する際もスムーズです。
効率的・簡潔に書くための工夫と書式の統一
忙しい現場では「簡潔さ」も重要です。文章が長すぎると読む側も負担が増えます。
- 文は短く、1文1事実
- 共通の略語を活用
- フォーマットを統一する
【例文&テンプレート】場面別 介護記録の具体例
食事・排泄・入浴・睡眠の基本記録例文
食事
「朝食8割摂取。嚥下状態問題なし。むせ込みなし。」
排泄
「9時30分、トイレ誘導にて尿失禁なし。便は軟便。」
入浴
「10時半、入浴介助実施。皮膚状態良好。背部わずかに赤みあり、経過観察。」
睡眠
「21時就寝。夜間覚醒なし。体調安定。」
夜勤記録・夕食後・夜間の観察や変化の記載例
夜勤では特に観察と時間の記録が重要です。
「2時、○○様トイレ訴え。立位不安定のため介助実施。転倒なし。」
転倒・事故・トラブル時の対応記録の書き方と例文
事故報告は5W1Hで「事実」のみを記載します。
「15時、ホールにて転倒。頭部打撲なし。痛み訴えず。看護師報告、経過観察。」
認知症・徘徊・訴えへの対応記録のポイントと例文
「14時、施設外に出ようとする行動あり。職員声かけし居室に誘導。表情落ち着く。」
看取り介護記録の書き方と配慮した表現例
看取り期は家族への配慮も必要です。
「呼吸状態浅く、SpO2低下。家族へ状況説明。安楽を優先し介助実施。」

実際の記録作成の流れと業務効率化のヒント
手書き・ソフト・PDFテンプレートの使い分け
- 手書き:急ぎの場面や転倒事故直後
- ソフト入力:記録ストックや共有に便利
- PDFテンプレート:訪問介護など持ち出しに最適
略語・専門用語とわかりやすい言葉のバランス
専門用語ばかりでは家族や他職種が理解しにくくなります。「嚥下」「皮膚剥離」「褥瘡」などは一般的な言葉を併記すると安心です。
例:
「褥瘡(じょくそう:床ずれ)あり」
情報共有・スタッフ間コミュニケーションの工夫
情報共有は事故防止のカギです。チーム内の申し送り、カンファレンスでの報告など、職種を超えて共有する仕組みを作りましょう。
記録ストック・資料活用による業務負担軽減
過去の記録を参考にする「テンプレート化」は効率化のコツです。頻出する文章や表現をストックしておくと記入が早くなります。
介護記録でやってはいけないNG表現&注意点
曖昧な表現・主観の書き方と避けるべき理由
「なんとなく」「多分」などは誤解を招きます。事実を書き、判断は医師や看護師へ相談するのが原則です。
使ってはいけない言葉・差別的表現例とその背景
「ボケている」「粗暴」「徘徊者」など、差別的で本人の尊厳を傷つける表現はNGです。代替表現を学びましょう。
例:
- 「徘徊」→「歩き回る行動が見られる」
- 「粗暴」→「大声で叫ぶ、物を叩く行動」
名前・個人情報の扱いとプライバシー保護
記録は個人情報の塊です。外部に持ち出す際は施錠、データはパスワード保護が必須です。
プロが教える!苦手意識克服&スキル向上のコツ
慣れない人向け「よくわかる介護記録の書き方」入門
- 短い文で書く
- 5W1Hを使う
- 「行動」「様子」を観察する
これだけでグッと質が上がります。
新人・未経験者も安心!事例・メモ・タイムライン活用
日中、気づいたことをメモしておき、まとめて記入すると漏れが減ります。時系列の記録は転倒や事故の際にも役立ちます。
先輩介護士・福祉職員の工夫と現場ノウハウ
先輩の記録を読むことも勉強になります。わからないときは遠慮せず相談することが成長の近道です。
介護記録Q&A|よくある疑問と現場の悩みを徹底解説
介護記録と加算・算定の関係は?
記録は加算算定の根拠になります。例えば「特定処遇改善加算」など、提供したサービス内容をきちんと記録することが必要です。
困ったときの記録修正・トラブル対応方法
修正は二重線で消し、訂正印を押すのが基本です。電子記録は履歴が残るため、訂正理由を追記するのが望ましいです。
家族・他職種との連携・コミュニケーションQ&A
「どこまで伝えていいの?」と迷う場面も多いですが、利用者の同意を得た範囲で共有することが大前提です。
まとめ|介護記録を“質”で差をつけるためのポイント
介護記録は単なる業務ではありません。利用者の尊厳を守り、職員や看護師、家族との信頼関係を築き、ケアの質を向上させる重要な仕事です。
「客観的・具体的に、短く、わかりやすく」という基本を押さえつつ、現場の工夫やテンプレートを活用し、情報共有の要として記録を磨いていきましょう。介護職にとって、記録は自分自身と利用者を守る最大の武器です。ぜひ本記事を現場の参考にしてください。