
「職員それぞれは真面目なのに、なぜかチームとしてまとまらない」——介護施設の施設長・管理者から、こうした声をよく聞きます。本記事では、研修に頼る前に、コミュニケーションと情報共有の仕組みを変えるだけで始められる5つの取り組みを、具体例とチェックリストつきで解説します。
なぜ介護施設はチームワークが崩れやすいのか
結論から言うと、介護施設は他業種に比べて「チームがまとまりにくい構造的な理由」を抱えています。まずこの背景を押さえておくと、取り組みの効果も出やすくなります。
理由1:シフト制で全員がそろう機会がない
早番・遅番・夜勤とシフトが分かれているため、職員全員が顔を合わせるタイミングがほとんどありません。情報が一部の職員だけに偏り、「聞いていない」「言った・言わない」のトラブルにつながりやすい構造です。
理由2:雇用形態や職種の立場が多様
正社員・パート・派遣、さらに介護職・看護職・リハビリ職など、雇用形態も職種も混在しています。同じ「チーム」でも立場によって見えている景色が違うため、意識をそろえるための工夫が欠かせません。
理由3:情報共有が個人の「口頭伝達」に頼りがち
申し送りノートや口頭での引き継ぎに依存していると、忙しい時間帯ほど情報が抜け落ちます。結果として利用者対応にばらつきが出て、「あの人はできているのに、この人はできていない」という不満がチーム内に蓄積します。

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介護施設のチームワークを高める5つの取り組み
上記3つの背景をふまえ、明日から着手できる取り組みを5つ紹介します。研修のような大がかりな準備は不要で、いずれも運営の工夫と職場環境の整え方だけで始められるものです。
取り組み1:情報共有を「口頭」から「見える化」に変える
申し送りの内容をホワイトボードや共有ノート、無料のチャットツールなどで文字として残す仕組みに切り替えます。ポイントは次の3つです。
- 「誰が・いつ・何を・どうしたか」を記入するフォーマットを統一する
- 出勤時に必ず確認するルールにする(見た人はチェック欄にサインする等)
- 緊急度の高い情報は色分けや先頭表示で目立たせる
口頭伝達をゼロにする必要はありません。ただし「重要な情報は必ず記録にも残す」というルールを徹底するだけで、聞き漏れによるトラブルは大きく減らせます。
取り組み2:役割と目標を数値で明確にする
「みんなで頑張ろう」という声かけだけでは、チームは動きません。誰が何を担当し、何を達成すれば成功なのかを数値と期限で示すことが重要です。
| 目標例(あいまい) | 数値化した目標例 |
|---|---|
| 転倒事故を減らす | 今月の転倒件数を[ ]件以下にする |
| 情報共有を徹底する | 申し送りノートの記入漏れを週0件にする |
| 新人を育てる | 入職3か月でシフト単独対応をできるようにする |
役割分担についても、口頭だけでなく一覧表にして掲示すると、「自分の仕事」と「誰かに聞くべきこと」の境界がはっきりし、責任の押し付け合いが起きにくくなります。
取り組み3:短時間でも対話の場を定例化する
シフト制の施設では、全員参加の会議を頻繁に開くのは現実的ではありません。そこでおすすめなのが、5〜10分の短時間ミーティングを定例化する方法です。日常的なコミュニケーションの機会を意図的につくることが狙いです。
- 朝礼・申し送り時に「今日の共有事項」を1分で読み上げる
- 週1回、リーダー層だけで15分の情報交換の場を持つ
- 月1回、部署をまたいだ職員同士で困りごとを話す時間を設ける
時間の長さよりも「必ず続ける」ことが重要です。不定期な長時間ミーティングより、短時間でも継続する仕組みのほうが、チームの一体感は育ちやすくなります。
取り組み4:多職種連携の最低限のルールを決めておく
介護職・看護職・リハビリ職・生活相談員など、職種が異なるほど「言葉の前提」がずれやすくなります。すべてを一から仕組み化しなくても、次の2点だけは最低限決めておきましょう。
- 利用者の状態変化を、誰が・どの手段で・どの職種に伝えるかのルート
- 定例カンファレンスの頻度と、そこで必ず確認する項目
まずはこの2点をルール化するだけでも、職種間の情報の抜け漏れは大きく減らせます。連携の対象範囲を広げるのは、この最低限のルールが定着してからで十分です。
取り組み5:感謝・称賛を可視化する仕組みを作る
介護現場は「できて当たり前」と見なされがちで、感謝や称賛の言葉が不足しやすい環境です。次のような仕組みで、意識的に可視化することをおすすめします。
- 申し送りノートの隅に「ありがとう欄」を作り、気づいたことを一言書き込む
- 月1回のミーティングで「今月助かったこと」を1人1つ発表する
- 小さな成功や工夫を、掲示板やチャットで共有する
称賛の仕組みは、離職防止やモチベーション向上にも直結します。特に新人職員は「見てもらえている」と感じられるかどうかが、定着の分かれ目になりやすい部分です。

取り組みを始めても続かないときの対処法
5つの取り組みを紹介しましたが、「始めたものの続かない」という相談も少なくありません。よくある3つのつまずきと対処法を紹介します。
- 忙しくて時間が取れない:新しい取り組みを増やすのではなく、既存の申し送りやミーティングの「やり方」を変えることから始める(時間を新たに確保しない)
- 一部の職員だけが協力的でない:全員に同じ熱量を求めず、まずは主任・リーダー層など一部から定着させ、後から広げる
- 形だけになり中身が伴わない:チェック項目を減らし、「これだけは必ず」という1〜2項目に絞って継続を優先する
完璧な運用を最初から目指さず、「小さく始めて、少しずつ広げる」ことが、結果的に長続きする近道です。
チームワーク向上のセルフチェックリスト
自施設の現状を把握するために、次のチェック項目で振り返ってみましょう。当てはまらない項目が多いほど、優先的に取り組むべきポイントです。
- □ 申し送りの内容が、口頭だけでなく記録にも残っている
- □ 職員それぞれの役割・担当が一覧で見える形になっている
- □ 短時間でも、定期的に顔を合わせて話す機会がある
- □ 職種をまたいだ情報共有のルートが決まっている
- □ 感謝や称賛の言葉が、仕組みとして可視化されている

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ミニ事例:情報共有の見える化でチームの不満が減ったケース
課題:ある施設では、申し送りが口頭中心で、夜勤明けの職員と日勤の職員の間で「聞いていない」というトラブルが頻発していました。
施策:申し送りノートのフォーマットを統一し、「誰が・いつ・何を対応したか」を必ず記入するルールに変更。あわせて、出勤時に必ず確認欄にサインするルールを追加しました。
結果:情報の聞き漏れに起因するトラブルの申告が減ったとの声が現場から上がっています
(※本事例は一般的な改善プロセスの一例です。効果の程度は施設の状況により異なるため、導入時はヒヤリハット件数などの指標を継続的に記録することをおすすめします)。

よくある質問(FAQ)
Q1. 介護のチームワークを高めるための目標例は?
「申し送りノートの記入漏れを週0件にする」「入職3か月でシフト単独対応ができるようにする」など、数値と期限が入った目標が有効です。あいまいな精神論よりも、達成できたかどうかが誰の目にも分かる目標にすることがポイントです。
Q2. 介護のチームワークで大切なことは何ですか?
情報共有の仕組み化、役割の明確化、対話の場の定例化の3つが土台になります。いずれも特別な予算がなくても、運用ルールを変えるだけで着手できます。
Q3. 介護現場でチームワークを高めるには、まず何から始めればよいですか?
最も着手しやすいのは、本記事の取り組み1「情報共有の見える化」です。新しい時間を確保する必要がなく、既存の申し送りのやり方を変えるだけで始められます。
Q4. 介護のチームワークの重要性とは何ですか?
チームワークが弱いと、利用者対応にばらつきが出たり、職員間の不満が蓄積して離職につながったりします。逆に高まると、事故対応や急な欠員にもチームで柔軟に対応できるようになります。
Q5. 取り組みを始めても、なぜかチームがまとまらないのはなぜですか?

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多くの場合、取り組みが「一部の職員任せ」になっているか、始めたばかりで定着する前に評価してしまっていることが原因です。まずは主任・リーダー層から定着させ、3か月程度は継続してから効果を見極めることをおすすめします。
まとめ
介護施設のチームワークは、シフト制・多職種・情報の属人化という構造的な理由から崩れやすいものです。しかし、情報共有の見える化、役割・目標の数値化、短時間の対話の場、多職種連携の最低限のルール、感謝の可視化という5つの取り組みは、いずれも大きな予算や時間をかけずに始められます。まずはチェックリストで自施設の現状を振り返り、優先度の高いものから1つずつ着手してみてください。
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※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。制度・実施義務等に関する記載は改定される場合があるため、最新情報は厚生労働省等の公的機関の一次情報および所属先の規程をご確認ください。

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