「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用しても定着しない」——介護現場の人手不足は、多くの施設長・経営者にとって最も重い悩みではないでしょうか。人手不足は採用だけで解決するものではなく、原因を正しくつかみ、業務の見直し・定着・処遇の改善を組み合わせて初めて動き出します。

本記事では、介護の人手不足が起きる原因と背景、今後の見通し、そして自施設で実行できる解決策10選を、順序立てて整理しました。読み終えれば、「まず自施設のどこから手をつけるか」が描けるようになります。

この記事は、介護現場の「人と数字の悩み」に向き合ってきた「介護のYOHAKU」の視点を踏まえて構成しています。

介護の人手不足はなぜ起きるのか|5つの原因

「なぜ介護は人手不足なのか」を、現場の実感に即して5つに整理します。原因が分かると、自施設で効くのが「採用」なのか「定着」なのか「業務改善」なのかが見えてきます。

  1. 需要の増加に供給が追いつかない:高齢化で介護を必要とする人が増える一方、生産年齢人口は減少し、働き手の確保が構造的に難しくなっています。
  2. 離職率の高さ:採用しても定着しなければ、穴を埋めるための採用に追われ続けます。人間関係・教育体制・処遇への不満が主な離職理由として挙げられます。
  3. 賃金・処遇のイメージ:処遇改善は進みつつありますが、「仕事のきつさに見合わない」というイメージが応募のハードルになりがちです。
  4. 業務負担の重さ:記録・送迎・行事準備など直接介護以外の業務が多く、一人あたりの負担が大きくなりやすい構造があります。
  5. 採用力・職場の見せ方の弱さ:求人票が他施設と似通い、「ここで働きたい」と思わせる情報が伝わっていないケースも少なくありません。

ポイントは、これらが連鎖していることです。業務負担が重い→余裕がなく教育が手薄→新人が辞める→さらに人手が減る、という悪循環に陥りやすいのが介護現場です。逆に言えば、どこか1か所を断ち切れば循環を好転させられます。

職員定着、人間関係、チームづくり、数字管理。

施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。

介護の人手不足は今後どうなるか|将来の見通し

「この先もっと厳しくなるのか」という不安はもっともです。高齢者人口の増加と働き手の減少が同時に進むため、国の推計でも介護人材は今後さらに多く必要になると見込まれています。

※必要となる介護人材数や不足見込みの具体的な数値は、推計の前提・公表年次によって変わります。本記事では具体的な数値を断定していません。[最新の必要人材数・不足見込みは厚生労働省の公表資料で要確認]

ただし、これは「打つ手がない」という意味ではありません。将来の労働力が限られる前提に立つからこそ、「人を増やす」だけでなく「少ない人数でも回る仕組みをつくる(生産性向上)」と「今いる人に長く働いてもらう(定着)」の3点を同時に進めることが現実的な戦略になります。次章からの解決策も、この3つの軸で構成しています。

介護 車椅子

解決の前に|自施設の人手不足を「可視化」する

解決策に飛びつく前に、まず自施設の現状を数字で見える化します。やみくもに採用や設備投資をしても、ボトルネックがずれていると効果が出ません。

  • 業務の棚卸し:1日の業務を書き出し、「直接介護」と「それ以外(記録・送迎・準備・会議など)」に分けて時間を見積もる。
  • ムダの洗い出し(3M):ムリ(過負荷)・ムダ(不要作業)・ムラ(時間帯や人による偏り)の観点で、減らせる業務を探す。
  • 離職の理由を把握する:退職者の理由を記録・分析する。多い理由がそのまま最優先の改善テーマになる。

「どの業務に時間が奪われているか」「なぜ辞めるのか」の2つが分かれば、次の10の解決策から自施設に効くものを選べます。

会議

介護の人手不足を解消する解決策10選

採用・生産性向上・定着の3軸でまとめました。すべてを一度にやる必要はありません。可視化で見えたボトルネックに近いものから着手します。

  1. 業務の可視化とムダ取り:棚卸しで見つけた不要・重複業務をやめる・減らす。最も低コストで効く第一歩。
  2. ICT・介護記録ソフトの活用:記録・転記・情報共有の手間を減らし、直接介護に時間を回す。
  3. 見守りセンサー・介護ロボットの導入:夜間巡視や移乗の負担を軽減。補助金の対象になる場合があるため要確認。
  4. 業務の標準化と役割分担:マニュアル・手順書で属人化を防ぎ、介護助手など周辺業務の分担で専門職を直接介護に集中させる。
  5. 多様な人材の活用:短時間勤務、子育て・介護との両立支援、元気な高齢者やセカンドキャリア人材、潜在介護福祉士の掘り起こし。
  6. 外国人介護人材の受け入れ:特定技能・EPA・技能実習などの制度活用。受け入れには体制づくりとやさしい日本語などの配慮が必要。
  7. 処遇改善加算の活用:加算を賃金改善と職場環境の整備に確実に充て、待遇面の不満を減らす。
  8. 採用力の強化:求人票に自施設の強み・働き方・教育体制を具体的に書く。職場の様子が伝わる情報発信を行う。
  9. 教育・オンボーディングの整備:新人が「放置されない」仕組み(プリセプター制・チェックリスト)で早期離職を防ぐ。
  10. チームづくり・人間関係の改善:離職理由で多い人間関係に手を打つ。役割の明確化と対話の場づくりで職場の空気を変える。

※補助金・助成金(ICT導入支援、介護ロボット導入支援など)や加算の要件・対象は改定されます。最新の要件・募集状況は厚生労働省・自治体・労働局の一次情報でご確認ください。

職員定着、人間関係、チームづくり、数字管理。

施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。

採用より先に「定着」|辞めない職場のつくり方

人手不足対策で最も費用対効果が高いのは、実は採用ではなく定着です。1人採用するコスト(求人費・教育時間)を考えると、今いる職員に長く働いてもらうほうが負担は小さくなります。穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるより、まず穴をふさぐ発想です。

定着のカギは、離職理由の上位を占める「人間関係」「教育・成長実感」「評価・処遇への納得感」に向き合うことです。

  • 人間関係・チーム:役割分担を明確にし、対話の場をつくる。チームビルディングの視点が効く。
  • 成長実感:キャリアパスと研修をつなげ、「次に何をすれば成長・昇給できるか」を見える化する。
  • 評価の納得感:頑張りが評価・処遇に反映される仕組み(目標と指標=KPIの共有)を整える。

賃金改善(処遇改善加算)という土台の上に、人間関係・成長・評価の納得感を重ねることで、はじめて「辞めない職場」になります。

(例)ある施設では、退職者面談の記録から離職理由の最多が「新人時の放置感」と分かり、プリセプター制と新人チェックリストを導入。早期離職が減り、採用にかける時間を現場改善に回せるようになったといいます。

ミーディングをする介護士

解決策の進め方|小さく始めて根付かせる

10の解決策を前にしても、いきなり全部は回りません。次の手順で1つずつ進めます。

  1. 可視化で1番のボトルネックを特定する(業務負担か、離職か、採用か)。
  2. 小さく試す:いきなり全館展開せず、1ユニット・1業務で試す。
  3. 数字で確かめる:残業時間・離職率・受講率など、効果を測る指標を決めておく。
  4. 仕組みにする:効果が出た取り組みを手順書・ルールに落とし、担当者が代わっても続く形にする。

担当を1人に背負わせないことも重要です。業務改善や定着策は、現場を巻き込んで進めるほど根付きやすくなります。自施設だけで進め方に迷うときは、外部の伴走支援を使うのも一つの方法です。

悩む介護福祉士

よくある質問(FAQ)

Q. 介護業界はなぜ人手不足なのですか?

A. 高齢化による需要増に働き手の供給が追いつかない構造に加え、離職率の高さ、業務負担の重さ、処遇のイメージ、採用力の弱さが連鎖しています。原因は施設ごとに異なるため、まず自施設の状況を可視化することが出発点です。

Q. 介護の人手不足は今後どうなりますか?

A. 高齢者人口の増加と働き手の減少が同時に進むため、介護人材は今後さらに多く必要になると見込まれています。具体的な必要数は推計により変わるため最新の公表資料をご確認ください。「採用」「生産性向上」「定着」を同時に進めるのが現実的な戦略です。

Q. 介護施設の人手不足の解決策は何ですか?

A. 業務の可視化とムダ取り、ICT・介護ロボットの活用、業務の標準化・役割分担、多様な人材の活用、外国人材の受け入れ、処遇改善加算の活用、採用力強化、教育・定着の整備、チームづくりなどです。可視化で見えたボトルネックに近いものから着手します。

Q. 採用と定着、どちらを優先すべきですか?

A. 多くの場合、定着が先です。採用には求人費・教育時間のコストがかかるため、今いる職員に長く働いてもらうほうが負担を抑えられます。離職理由(人間関係・成長実感・評価の納得感)への対策が効果的です。

Q. 人手不足対策に使える補助金はありますか?

A. ICT導入支援や介護ロボット導入支援、人材開発支援助成金など、活用できる制度がある場合があります。対象・要件・募集状況は改定されるため、厚生労働省・自治体・労働局の最新情報をご確認ください。

職員定着、人間関係、チームづくり、数字管理。

施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。

まとめ

介護の人手不足は、需要増・離職・業務負担・処遇イメージ・採用力という原因が連鎖して起きています。だからこそ、採用だけに頼らず、「業務の可視化→生産性向上→定着→採用」の順で、自施設のボトルネックから手をつけることが解決の近道です。

今日からできる一歩は、1日の業務を「直接介護」と「それ以外」に分けて書き出し、減らせる業務と、退職者が挙げた理由を1つずつ洗い出すことです。そこから、本記事の10の解決策のうち自施設に効くものを選んでみてください。

「人と数字の悩み」を、業務改善・定着・チームづくりまで含めて整えたいときは、「介護のYOHAKU」の研修・個別相談もご活用いただけます。「余白(余裕)から成長が生まれる」を理念に、現場が回る仕組みづくりを伴走支援します。

こんなお悩みはありませんか?

□ 求人を出しても応募が集まらない

□ 採用してもすぐ辞めてしまう

□ 記録や周辺業務に時間を奪われている

□ 処遇改善は進めたのに定着につながらない

「介護のYOHAKU」では、ZOOMを活用したKPI研修・チームビルディング研修・個別相談を通じて、業務の見直しと定着・チームづくりの仕組みを支援しています。

人手不足・定着の進め方を相談する

あわせて読みたい

著者・監修

執筆:介護のYOHAKU編集部(介護施設向け研修・人材育成支援)

運営者「介護のYOHAKU」が提供する研修支援サービス

  • ZOOMを活用した介護現場向けの研修(KPI研修・チームビルディング研修など)
  • 業務改善・定着・チームづくりに関する個別相談
  • 評価・育成の仕組みづくり支援

本記事は一般的な傾向と対策を整理したものであり、将来推計・必要人材数・補助金や加算の要件などは公表年次や制度改定により変わります。具体的な数値・要件は、厚生労働省や所轄の都道府県・市区町村、労働局が公表する一次情報を必ずご確認ください。