説明する介護士

「稼働率が思うように上がらない」「なんとなく低い気はするけれど、何から手をつければいいか分からない」——施設長や管理者の方から、こうした声をよく耳にします。本記事では稼働率の計算方法と全国的な目安、稼働率が上がらない原因、そして今日から着手できる改善策6つを、数字の根拠とあわせて解説します。

介護施設の稼働率とは?計算方法と全国平均の目安

介護施設の稼働率とは、施設が受け入れ可能な定員に対して、実際にどれだけ利用者を受け入れられているかを示す割合です。稼働率が低い状態が続くと、収益が定員どおりの想定を下回り、人件費や固定費の負担感が増していきます。逆に稼働率が高すぎても、職員の負担が偏り、ケアの質や新規受け入れの柔軟性を損なうリスクがあります。稼働率は「高ければ高いほど良い」という単純な指標ではなく、収益と現場負担のバランスを見るための経営指標として捉えることが大切です。

稼働率の計算方法を具体例で解説

入所系施設の稼働率は、次の式で計算するのが一般的です。

稼働率(%)= 利用延べ人数(または稼働ベッド数の合計)÷(定員数 × 日数)× 100

たとえば定員50名の施設で、ひと月(30日)の利用延べ人数が1,320人であれば、1,320 ÷(50×30)× 100 = 88%となります。日次で管理する場合は「その日の入所者数 ÷ 定員数 × 100」で算出し、月間平均を追う運用が現場では扱いやすいでしょう。空床が発生した日をカレンダーやスプレッドシートに記録しておくと、後述する原因分析にもそのまま活用できます。

全国平均・目安のレンジ

稼働率の水準は施設種別や地域によって差が大きく、単一の「全国平均」を断定することはできません。一般的な目安として、特別養護老人ホームは待機者を抱える施設が多く90%台後半で推移するケースが報告されています。一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では80%台後半〜90%前後で推移していると紹介される調査もあります。あくまで目安であり、最新の数値や自施設の立ち位置を把握するには、都道府県の実態調査や公的機関の一次情報、あるいは近隣の同種施設の傾向を確認することをおすすめします。

職員定着、人間関係、チームづくり、数字管理。

施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。

稼働率が上がらない・下がる原因を整理する

稼働率の改善は、まず原因を「施設内部の要因(内的要因)」と「施設外部の要因(外的要因)」に分けて整理するところから始まります。原因を特定しないまま対策を打つと、現場の負担だけが増えて成果につながりません。

内的要因

  • 空床・退所の見込みを可視化できておらず、次の受け入れ準備が後手に回る
  • ケアマネジャーや医療機関への情報発信・営業活動が不足している
  • 利用者や家族の満足度が低く、口コミ・紹介が生まれにくい
  • 受け入れ体制(医療対応の可否、要介護度の受け入れ幅など)への理解が地域に広がっていない
  • 人員体制が不安定で、新規受け入れに慎重にならざるを得ない

外的要因

  • 施設周辺の高齢者人口の減少、あるいは競合施設の増加
  • 地域の居宅介護支援事業所・病院との連携が薄く、紹介経路が限定的
  • 制度改定(報酬改定・要介護認定基準の見直しなど)による需要の変化

内的要因は自施設の取り組み次第で改善できる余地が大きく、まずここから着手するのが現実的です。外的要因は短期間でのコントロールが難しいため、地域連携の強化など中長期的な打ち手で補っていく発想が必要になります。

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介護施設の稼働率を上げる具体的な方法6つ

原因を整理したら、次は改善策です。ここでは現場で実践しやすい6つの方法を、優先順位をつけずに紹介します。自施設の状況に合わせて、内的要因から手をつけるのが基本です。

No.施策主にきく要因概要
入退所管理の見直し内的要因空床期間の短縮、後任候補の前倒し選定
地域連携の強化内的・外的要因ケアマネ・MSW・地域包括支援センターとの関係構築
利用者・家族満足度の向上内的要因紹介・継続利用につながる満足度の底上げ
情報発信・広報活動内的要因ホームページ・SNS・見学会での認知度向上
人員体制の安定化内的要因定着率向上による受け入れ余力の確保
加算取得との組み合わせ内的要因稼働率一本足打法から脱却する収益構造

①入退所管理を見直し、空床期間を短縮する

退所予定者の情報を早期に把握し、次の入所候補者の選定を前倒しで進める体制を整えます。空床が発生してから動き出すのではなく、「退所予定の1〜2週間前には後任候補が決まっている」状態を目指すと、空床期間を大きく圧縮できます。入退所の見込みを一覧表で管理し、相談員・管理者・現場リーダーで週次共有する運用が効果的です。

②地域連携を強化し、紹介経路を増やす

居宅介護支援事業所のケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)、地域包括支援センターとの関係構築は、稼働率対策の中でも即効性が高い施策です。自施設の受け入れ可能な要介護度・医療対応の範囲・空室状況を定期的に伝えるだけでも、紹介の優先順位が上がります。地域のケア会議への参加や、パンフレットの定期送付なども有効です。

(例)ある入所系施設の取り組み:紹介経路がケアマネジャー数名に偏り、空床のたびに稼働率が上下していた施設が、地域包括支援センターと病院MSWへの定期訪問を月1回仕組み化。半年ほどで紹介元が広がり、稼働率のブレが小さくなったという声もあります。効果は施設規模や地域事情で異なるため、一つの参考例として捉えてください。

③利用者・家族の満足度を高め、紹介・継続利用につなげる

新規獲得だけでなく、既存利用者・家族の満足度向上も稼働率に直結します。満足度が高い利用者・家族は、周囲への紹介者になってくれる可能性が高く、営業コストをかけずに新規相談につながることも珍しくありません。定期的な家族面談やアンケートで満足度を把握し、不満や要望を早期にケアへ反映する仕組みを持つことが重要です。

④情報発信・広報活動を強化する

自施設の特徴や強みが地域に伝わっていなければ、どれだけ良いケアをしていても選ばれる機会を逃してしまいます。ホームページやSNSでの定期的な情報発信、見学会・相談会の実施、地域の医療機関への訪問営業など、複数のチャネルを組み合わせて認知度を高めていきましょう。

⑤人員体制を安定させ、受け入れ余力をつくる

稼働率と人員配置は表裏一体の関係にあります。人員配置基準を満たせない、あるいはギリギリの体制では、新規受け入れに慎重にならざるを得ません。スタッフの定着率を高め、安定した人員体制を確保することが、結果的に安心して新規利用者を受け入れられる土台になります。職員の負担感や離職の兆候は、稼働率対策の一部として日頃から把握しておく価値があります。

⑥加算取得と組み合わせ、稼働率だけに依存しない収益構造をつくる

稼働率を上げること自体が目的化すると、無理な受け入れによって現場の負担が増え、かえってケアの質や職員定着に悪影響を及ぼすことがあります。各種加算の算定要件を満たし、収益を「稼働率×客単価」の両面で高める視点を持つと、稼働率100%を追い求めすぎない、無理のない経営環境をつくれます。加算の算定要件や計算方法は制度改定で変わることがあるため、最新情報は公的機関の一次情報や所属先の規程で必ず確認してください。

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稼働率を「感覚」ではなく「数字」で管理する視点

ここまで紹介した6つの改善策は、いずれも「稼働率」「空床日数」「紹介件数」「満足度」「離職率」といった数字で進捗を管理できるものばかりです。逆に言えば、これらの数字を定点観測できていない施設では、対策を打っても効果検証ができず、改善の取り組みが長続きしません。

多くの現場で起きているのは、「稼働率が下がっている感覚はあるが、どの要因がどれくらい影響しているか説明できない」という状態です。この状態から抜け出すには、稼働率・加算・人員配置といった数字を根拠に現場改善を進める、いわゆるKPI管理の考え方が有効です。稼働率を軸に、人員配置・加算・収益の数字をセットで見られるようになると、施設長や管理者だけでなく、主任やユニットリーダーの意思決定も格段にスピードアップします。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 介護施設の稼働率とは何ですか?

A. 施設の定員に対して、実際にどれだけの利用者を受け入れられているかを示す割合です。稼働率が高いほど定員に近い状態で運営できていることを意味しますが、高すぎる状態が続くと職員負担が増える面もあります。

Q2. 介護施設の稼働率はどうやって計算しますか?

A. 「利用延べ人数(または稼働ベッド数の合計)÷(定員数×日数)×100」で算出するのが一般的です。日次・月次のどちらでも管理できますが、傾向をつかむには月次での推移確認がおすすめです。

Q3. 介護施設の稼働率の全国平均はどのくらいですか?

A. 施設種別や地域によって差が大きく、一律の全国平均を示すことは困難です。特別養護老人ホームは90%台後半、有料老人ホーム等は80%台後半〜90%前後で推移すると紹介される調査もありますが、あくまで目安として捉え、最新の公的データで確認してください。

Q4. 通所介護(デイサービス)の稼働率の計算方法は入所施設と同じですか?

A. 基本的な考え方は同じですが、通所介護は「利用予定者数に対する利用実績」で見ることが多く、キャンセル対策や振替利用の促進が稼働率に直結しやすい点が入所施設と異なります。

Q5. 稼働率を無理に100%に近づけるのは良いことですか?

A. 必ずしも良いとは限りません。稼働率100%に近い状態が続くと、緊急時の受け入れ余地がなくなり、職員の負担も増加します。稼働率・人員配置・加算収益のバランスを見ながら、無理のない水準を目指すことをおすすめします。

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施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。

まとめ

介護施設の稼働率は、
①計算方法を正しく理解し、
②内的要因・外的要因の両面から原因を整理したうえで、
③入退所管理・地域連携・満足度向上・情報発信・人員体制・加算取得という6つの打ち手を組み合わせることで、着実に改善へつなげられます。
大切なのは、稼働率を「なんとなく低い気がする」で終わらせず、数字で捉えて改善サイクルを回すことです。

こんなお悩みはありませんか?

□ 稼働率が下がっている感覚はあるが、原因を数字で説明できない

□ 加算や人員配置と稼働率の関係を、現場のリーダー層まで共有できていない

□ 稼働率対策を「営業活動」だけに頼ってしまっている

□ 施設長・管理者は理解していても、主任・ユニットリーダーに数字管理の視点が浸透していない

介護のYOHAKUでは、稼働率・加算・人員配置といった数字をもとに現場改善を進める力を養う「介護業界特化KPI研修」をご用意しています(全3回・60分/回)。稼働率を「感覚」ではなく「数字」で管理する視点を、施設長・管理者・主任・ユニットリーダーの皆さまと一緒に整えていきます。全国どこからでもZOOMでご参加いただけ、移動時間もかかりません。

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運営:介護のYOHAKU(kaigo-y.com)

※本記事の稼働率の目安・計算方法は一般的な考え方に基づく解説です。制度・加算要件は改定される場合があるため、最新情報は厚生労働省等の公的機関の一次情報、および所属先の規程を必ずご確認ください。上記「(例)」の取り組み事例は特定の実在施設のデータではなく、説明のための一例です。

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施設ごとに課題は異なります。

まずは現状をお聞かせください。