介護記録 書き方の基本と現場で役立つ具体例〜効率的で伝わる記録術〜
【結論】
介護記録の書き方は、単なる業務報告ではなく「利用者のケアの質」を左右する重要な仕事です。ポイントは、事実を客観的に、具体的かつ簡潔に書くこと。5W1Hを活用し、誰が見ても状況や様子が理解できる記録を心掛けることで、情報共有が円滑になり、現場の負担軽減やトラブル防止につながります。記録は介護サービスの質向上の大きな鍵です。

はじめに
介護現場で欠かせない業務のひとつが「介護記録の作成」です。しかし、「どこまで詳しく書くべきか」「どんな言葉を使えばいいか」と悩む職員は少なくありません。介護記録は、利用者の体調や行動、ケアの実施内容など、日々の業務を支える重要な情報共有ツールです。書き方次第で、情報の伝わり方が大きく変わり、職員同士の連携や利用者への対応の質にも影響を与えます。
本記事では、介護現場で働く職員や管理者に向け、介護記録の書き方の基本から具体例、効率化のコツまで、現場で即活かせるノウハウを詳しく解説します。ポイントを押さえた記録作成で、情報共有を円滑にし、介護サービスの質向上を目指しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護記録はどのくらい詳しく書けばいいのですか?
→ 基本は「第三者が読んでも利用者の様子がわかる程度」に具体的に書くことが大切です。特に変化やトラブル、普段と違う様子は詳しく記録しましょう。
Q2. 書き方にルールや統一の仕方はありますか?
→ 施設や事業所によって様式や方針は異なりますが、共通するのは「客観的に、具体的に、簡潔に」。5W1Hを意識して書くことが重要です。
Q3. ICTツールの活用は必須ですか?
→ 必須ではありませんが、入力の効率化やデータの共有がしやすくなるため、導入を検討する価値は大いにあります。職員の負担軽減にもつながります。

介護記録の役割と必要性を理解しよう
介護記録はケアの証拠であり情報共有の要
介護記録は、単なる「業務の報告書」ではありません。利用者の健康状態や生活の様子、行動、感情、体調の変化などを正確に残すことで、他職種との情報共有やケアプランの見直し、事故やトラブル時の証拠として大きな役割を果たします。例えば転倒が発生した場合、その直前の様子や体調、行動の記録が原因分析の重要な手掛かりになります。
記録は家族や関係者への大切な報告
家族から「お昼はどんな食事をとっていますか?」と聞かれた際も、介護記録があれば正確に説明できます。利用者本人が覚えていない場合や、認知症が進行しているケースでも、介護記録は貴重な証拠資料です。家族の安心感にもつながります。
記録が業務効率化やトラブル防止に直結する
現場では「忙しくて書く時間がない」と感じる職員も多いですが、記録が不十分だとトラブルの火種になる可能性があります。情報が共有されず、誤ったケアを行ってしまうリスクも。効率的に、かつ正確に書くスキルは現場全体の負担を減らします。
客観的で具体的な介護記録を書くコツ
「主観」ではなく「事実」を書く大切さ
「元気がない」「様子がおかしい」といった主観的表現だけでは、他の職員に情報が伝わりにくくなります。例えば、「表情が乏しく、昼食の摂取が主食3口のみ。『いらない』と発言」など、事実を具体的に記録することが重要です。
5W1Hを意識した記録がわかりやすい
「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を意識して記録を書くことで、読み手が状況を正確に把握できます。例えば「7月8日10時、居室で、介護福祉士○○が、トイレ介助中に転倒を発見。利用者は痛みを訴え、右膝に発赤あり」のように書くと具体的です。
専門用語や略語は正しく使う
介護記録では「ADL」「バイタル」「ケアプラン」など専門用語を使う場面も多いですが、略語だけだと職種や経験によって理解に差が出ます。必ず施設内で用語の統一や略語の解説を行いましょう。
効率的に記録するための工夫とツール活用
テンプレートやチェックリストを活用する
記録項目を統一することで、漏れを防ぎ、書きやすさも向上します。食事、排泄、入浴、睡眠、体調、表情など、チェック形式にすることで、短時間で情報を整理できます。
ICTやソフトを活用して入力時間を短縮
介護記録ソフトやタブレット入力を導入すると、業務効率が格段にアップします。例えば音声入力機能を使えば、手を使わず短時間で記録が残せます。導入にはコストがかかりますが、業務負担の軽減や情報の即時共有という大きなメリットがあります。
記録の「時間」を決めて習慣化する
「忙しいから後回し」では、記憶が薄れて正確性が下がります。夜勤の交代前やケア後すぐなど、記録するタイミングをルール化するのがおすすめです。
トラブル防止に役立つ介護記録の書き方
憶測や感情を書かない
「たぶん疲れている」「きっと不満がある」など憶測は禁物です。根拠のない記載は誤解を生みやすく、情報共有の妨げになります。必ず事実に基づいた文章を書きましょう。
万が一の事故は詳細に記録する
転倒、誤嚥、事故が起こった際は、時間、場所、状況、対応、利用者の言動、看護師や医師への報告状況を漏れなく記録することが大切です。後日、家族への説明や行政への報告が必要になるケースもあります。
記録の「目的」を常に意識する
介護記録は、利用者のケア向上、家族への説明、業務の証明、事故時の証拠など多くの目的を持っています。単なる作業にせず、記録の意味を理解することが、質の高いケアにつながります。
具体例で学ぶ介護記録の書き方
食事介助の記録例
- 悪い例:「食欲なし」
- 良い例:「昼食時、主食3口のみ摂取。おかず・汁物は手をつけず、『いらない』と発言。表情に疲労感あり。」
排泄介助の記録例
- 悪い例:「排尿あり」
- 良い例:「10時、トイレ誘導。排尿約200ml、色は淡黄色。痛みや違和感の訴えなし。」
転倒事故の記録例
- 悪い例:「転倒あり」
- 良い例:「7月9日14時、居室内で立ち上がり動作中に転倒。右膝に発赤と軽度の腫れ確認。利用者本人は『痛い』と発言。看護師に報告、湿布処置を実施。」
チームで取り組む介護記録の質向上
職員同士で情報共有の習慣をつける
「共有の場」を意識して、記録を読み合い、内容の改善点を話し合うことが大切です。記録は一人で完結するものではなく、チーム全体の財産です。
新人教育で記録スキルを底上げ
新人介護職は記録の書き方に戸惑いがちです。例文集やテンプレート、先輩の添削などを活用し、早期に正確な記録のスキルを身につけてもらいましょう。
トラブル事例を共有し「学び」に変える
「過去に記録不足で家族対応が難航した」「事故の詳細が書かれておらず原因分析ができなかった」など、具体的な事例を共有することで職員全体の意識向上につながります。
まとめ
介護記録は、ただの作業ではなく「ケアの質」を支える大切な仕事です。主観を排除し、客観的で具体的な記録を心がけることで、現場の連携やトラブル防止、家族への安心提供につながります。ICTツールの活用やチームでの情報共有を取り入れ、効率的で精度の高い記録作成を目指しましょう。今日からぜひ、あなたの現場でも実践してみてください。